トパーズ(黄玉)は、11月の誕生石として知られる石です。黄玉という和名の通り、古くは黄色い宝石として知られてきました。ところが現在、宝飾店で最もよく見かけるトパーズは青です。この色の変化には理由があります。この記事では、トパーズという石の正体、色ごとの違いと処理の実際、日本の産地、そして扱いの注意点までを、協会会長監修のもと解説します。
| 名称 | トパーズ(黄玉) |
| 英名 | Topaz |
| 主な産地 | ブラジル、ナイジェリア、スリランカ、ミャンマー ほか |
| モース硬度 | 8 |
| 誕生石 | 11月 |
| 石言葉 | 友情・希望・誠実(伝承による) |
トパーズとはどんな石か
トパーズは、アルミニウムとケイ素を主成分とし、フッ素と水酸基を含むケイ酸塩鉱物です。マグマの活動に伴って、ペグマタイトと呼ばれる粗い結晶の集まった岩体や、火山岩の空洞のなかで成長します。
モース硬度は8。ダイヤモンド、コランダム(ルビー・サファイア)に次ぐ硬さで、宝石としては非常に傷がつきにくい部類です。硬度を示す代表的な鉱物としてモース硬度の基準そのものにも採用されています。
ところが、この石には注意すべき性質があります。完全なへき開です。へき開とは、結晶の特定の一方向に、平面に沿ってきれいに割れる性質を持ちます。硬度8で傷はつきにくいのに、その方向から衝撃を受けると割れる。硬いことと壊れにくいことは別だということを、トパーズはよく示しています。
色は幅広く、無色、黄色、褐色、青、ピンク、そしてオレンジがかった赤まであります。ただし後述するとおり、市場に出回る色の多くは天然のままではありません。
和名の黄玉が示すように、かつてトパーズといえば黄色や褐色の石を指しました。青いトパーズが一般的になったのは、比較的近年のことです。
11月の誕生石としてのトパーズと伝承
11月の誕生石は、トパーズとシトリンの2石です。どちらも黄色系の石で、この組み合わせは日本の一覧でも海外の一覧でも共通しています。11月は黄色の月だといえます。
石言葉は「友情」「希望」「誠実」など。
名前の由来には複数の説があります。ひとつは紅海に浮かぶ島の古名トパゾスに由来するというもの。ただしこの島から実際に産出したのは、現在でいうペリドットだったと考えられています。ペリドットの記事で触れたエジプトの島と同じ場所です。もうひとつはサンスクリット語で火を意味する語に由来するという説です。
いずれにせよ、古代の「トパズ」が現在のトパーズと同じ石を指していたとは限りません。ルビーとスピネル、ペリドットとエメラルドと同様に、宝石の名前は科学的な同定ができるようになるまで、色と産地でおおまかに区分されていました。伝承を読むときは、この事情を前提にしておくと正確です。
中世ヨーロッパでは、黄色いトパーズが太陽の力を宿す石として扱われました。身につけることで理性を保ち、正しい判断ができるようになるといった語られ方をしています。当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは「石の効果についての考え方」をご覧ください。
色の種類と、処理の実際
ここがトパーズを買うときに最も重要な部分です。
市場に流通する青いトパーズの大半は、天然の色ではありません。無色または淡い色のトパーズに放射線を照射し、その後に加熱することで青色を発現させたものです。この処理は工業的に確立されており、大量に安定して供給できるため、青いトパーズは手に取りやすい価格帯で広く流通しています。
色の濃さによって、スカイブルー、スイスブルー、ロンドンブルーなどの呼称が使われます。淡いものから濃く暗いものへと並び、いずれも処理によって作り分けられた色です。
天然の青いトパーズも存在しますが、色は淡く、産出も限られます。濃い青のトパーズを見かけたら、処理されたものと考えるのが実態に近いでしょう。
処理そのものが問題なのではありません。放射線処理を施したトパーズは、日本では法令に基づく管理のもとで流通しており、残留放射能が基準を下回ることを確認したうえで市場に出ています。問題になるのは、処理の事実を知らずに天然の青だと思って買うことです。価格が大きく異なるためです。
インペリアルトパーズと呼ばれるオレンジがかった黄色から赤みを帯びた色の石は、ブラジルのオーロプレト地方を主産地とし、天然のままで高く評価されます。ピンクのトパーズには、加熱によって色を変えたものが含まれます。
購入時には、色が天然か処理かを確認してください。処理の全般については天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識にまとめています。
日本とトパーズ|岐阜県苗木の黄玉
日本は、トパーズの産地として知られた歴史を持ちます。
岐阜県中津川市の苗木地方は、花崗岩ペグマタイトからトパーズを産出することで古くから知られてきました。この地域の花崗岩は苗木花崗岩と呼ばれ、トパーズのほか、水晶や長石などさまざまな鉱物を産します。明治期以降、鉱物標本として国内外に知られる存在になりました。
滋賀県の田上山も、日本を代表するペグマタイト鉱物の産地です。トパーズをはじめとする多くの鉱物が産出し、鉱物学の歴史のなかで重要な位置を占めてきました。
現在、これらの地域で採掘が続けられているわけではなく、宝石として流通する日本産トパーズはごく限られます。それでも、日本の大地がトパーズを生み出してきたという事実は、この石を身近に感じる手がかりになります。水晶が山梨で採れ、翡翠が糸魚川で採れたように、トパーズにも日本の産地がありました。日本の水晶がたどった道については水晶とは|4月の誕生石の意味と、日本の水晶史をたどるでご紹介しています。
選び方と扱いの注意点
選ぶときは、まず色が天然か処理かを確認してください。前述のとおり、青いトパーズは処理品が大半です。処理を承知したうえで色の美しさで選ぶのであれば、何の問題もありません。
透明度の高い石が多く産出するため、内包物の少ないものを選びやすい石でもあります。大粒でも比較的手が届く価格帯にあることは、トパーズの魅力のひとつです。
扱いで最も注意すべきは、へき開です。
硬度8という数字から丈夫な石だと思われがちですが、一方向から強い衝撃を受けると割れることがあります。落下、硬いものへの打ちつけ、指輪をはめたまま重いものを持つといった動作は避けてください。傷はつかないが、割れる。この性質を理解しておくことが、トパーズと長く付き合ううえで最も大切です。
急激な温度変化も苦手です。超音波洗浄機は避けてください。処理によって色を得た石のなかには、強い光に長期間さらすと退色するものもあります。保管は直射日光を避けた場所で、柔らかい布に包んで単独で。基本のお手入れは天然石の浄化方法|石を傷めないお手入れと保管の基本をご覧ください。
かつては黄色い石として、いまは青い石として親しまれている。時代によって顔が変わってきた宝石です。どの色を選ぶにせよ、その色がどこから来たものかを知って選ぶと、石との付き合いが少し深くなります。
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