ペリドット(橄欖石)は、8月の誕生石として知られる黄緑色の宝石です。オリーブのような色から、英語ではオリビンとも呼ばれます。この石には他の宝石にない特徴があります。地球のはるか深部を作っている鉱物であり、そして隕石のなかからも見つかるのです。この記事では、ペリドットという石の正体、地球と宇宙にまたがる由来、産地、そして扱いの注意点までを、協会会長監修のもと解説します。
| 名称 | ペリドット(橄欖石) |
| 英名 | Peridot/Olivine |
| 主な産地 | アメリカ(アリゾナ)、中国、ミャンマー、パキスタン ほか |
| モース硬度 | 6.5〜7 |
| 誕生石 | 8月 |
| 石言葉 | 平和・幸福・希望(伝承による) |
ペリドットとはどんな石か
ペリドットは、鉱物としては橄欖石(かんらんせき)と呼ばれます。マグネシウムと鉄を含むケイ酸塩鉱物で、この二つの成分の比率によって色が変わります。宝石として使われるのは、マグネシウムの割合が高く、黄緑から緑がかった色を持つものです。
特徴的なのは、ペリドットには一色しかないことです。ルビーとサファイアのように色違いで名前が変わることもなければ、ガーネットのように一族で色が分かれることもありません。緑がかった黄色から、黄色がかった緑まで。振れ幅はありますが、常にこの範囲に収まります。
理由は発色の仕組みにあります。多くの宝石は、微量に混入した不純物によって色がつきます。無色の水晶に鉄が入ってアメジストになるように。ところがペリドットの緑は、鉱物そのものの構成成分である鉄に由来します。不純物ではなく、本体の一部が色を作っている。だから色が変わりようがないのです。
この石が特別なのは、その出自です。橄欖石は地球のマントル、つまり地殻の下に広がる層を構成する主要な鉱物です。私たちが立っている地面の、はるか下。そこは橄欖石でできた世界だと考えられています。
では、なぜそんな深いところの石が地表で手に入るのか。マグマの上昇に伴って運ばれてくるのです。玄武岩質のマグマが深部から上がってくるとき、マントルの岩石の破片を取り込んで一緒に運び上げることがあります。ペリドットの原石は、地球が地下から届けた便りのようなものだといえます。
そしてもうひとつ。橄欖石は隕石のなかからも見つかります。パラサイトと呼ばれる石鉄隕石は、金属の地に橄欖石の粒が散りばめられた構造をしており、切断して光にかざすとステンドグラスのように透けます。太陽系の初期に形成された天体の内部でも、同じ鉱物が作られていた。地球の内側と、宇宙の欠片。ペリドットは、そのどちらにも属する石です。
モース硬度は6.5から7。水晶とほぼ同等ですが、後述するとおり扱いには注意が必要です。
8月の誕生石としてのペリドットと伝承
8月の誕生石は、ペリドット、スピネル、サードオニキスの3石です。日本の一覧では2021年の改訂でスピネルが追加され、現在の顔ぶれになりました。海外の一覧でも8月の主役はペリドットで、この点は国際的に共通しています。
石言葉は「平和」「幸福」「希望」など。
古い伝承では、太陽の石として語られてきました。緑でありながら黄色みを帯び、光の下で明るく輝くこの石を、古代の人々は太陽と結びつけたようです。エジプトでは紅海に浮かぶ島から産出したとされ、夜になると光を放つと信じられていました。実際には夜間の採掘を隠すための言い伝えだったという説もあります。
中世ヨーロッパでは、教会の装飾に用いられました。ドイツのケルン大聖堂に納められた宝飾品に使われている緑の石は、長らくエメラルドと考えられていましたが、後にペリドットであることが判明したと伝えられています。エメラルドと混同されてきた歴史は、ルビーとスピネルの関係と似ています。
日本ではあまり馴染みのない石に思えますが、橄欖石そのものは各地の火山岩に含まれており、珍しい鉱物ではありません。ありふれた鉱物のなかで、条件が揃った一部だけが宝石になる。ムーンストーンと同じ構図です。当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは「石の効果についての考え方」をご覧ください。
産地と特徴
宝石質のペリドットで知られているのが、アメリカ・アリゾナ州です。サンカルロス居留地から産出するもので、市場に出回るペリドットの多くがここを産地としています。粒はそれほど大きくないものが中心ですが、色が明るく安定しています。
ミャンマー産は、大粒で色の濃いものが採れることで知られます。良質なものは深い緑を帯び、高く評価されます。
パキスタン産は、1990年代に北部の高地で新しい鉱床が見つかりました。標高4,000メートルを超える場所からの採掘で、大粒かつ透明度の高い石が産出します。
中国も産出国のひとつで、市場に一定量を供給しています。
そして特殊な産地として、隕石由来のペリドットがあります。パラサイト隕石から取り出された橄欖石で、宝石として加工されたものが少量流通しています。地球外で生まれた宝石という点で、ほかに代わりのない性格を持ちます。
選び方と扱いの注意点
選ぶときに見るのは、色と透明感です。
黄色みが強いものから緑が濃いものまで幅がありますが、一般には濃い緑に寄ったものが高く評価されます。ただし濃すぎると暗く沈むので、光を通したときの明るさとのバランスが問われます。可能であれば自然光の下で確かめてください。
内包物が少なく澄んだものが上質とされますが、ペリドットは内包物が入りやすい石でもあります。完全に無傷のものを探すより、目立つ位置に大きな内包物がないかを見るほうが現実的です。
ペリドットは加熱や含浸といった処理が施されることが比較的少ない石です。この点は買う側にとって安心材料になります。ただし緑のガラスが混ざる可能性はあるので、高額なものでは鑑別書を確認してください。
扱いには、硬度の数字以上の注意が必要です。
理由は三つあります。ひとつは熱に弱いこと。急激な温度変化で割れることがあり、宝飾店での修理時に加熱すると損傷する可能性があります。もうひとつは酸に弱いこと。汗や化粧品、洗剤が付いたまま放置すると表面が損なわれます。そしてへき開性があり、特定の方向からの衝撃で割れやすい性質を持ちます。
したがって超音波洗浄機は避け、身につけたあとは柔らかい布で拭いてください。指輪として日常的に使う場合は、石が保護される作りのものを選ぶと安心です。基本的なお手入れは天然石の浄化方法|石を傷めないお手入れと保管の基本にまとめています。
地球の深部で作られ、マグマに運ばれて地表に届いた石。あるいは、太陽系のどこかで生まれて落ちてきた石。手のひらに乗るこの緑が、そういう場所から来ているということを思うと、少し扱いが丁寧になります。
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