3月の誕生石として知られるアクアマリンには、あまり語られない前提があります。市場に出ているものの大部分は、緑色を取り除くために加熱されたものです。これは隠すべきことではなく、この石を選ぶうえで知っておいたほうがよい事実です。名前の由来から産地、選び方まで順に見ていきます。
| 鉱物名 | 緑柱石(ベリル/Beryl) |
| 和名 | 藍玉(あいだま)、水藍玉 |
| 化学組成 | Be3Al2Si6O18 |
| 結晶系 | 六方晶系 |
| モース硬度 | 7.5〜8 |
| 主な産地 | ブラジル、モザンビーク、ナイジェリア、マダガスカル、パキスタン |
| 色 | 淡青、青、緑がかった青 |
| 誕生石 | 3月 |
| 名前の由来 | ラテン語で水を意味するaquaと、海を意味するmarinus |
アクアマリンとは
アクアマリンは、ベリル(緑柱石)という鉱物のうち、青から緑がかった青のものを指す呼び名です。
同じベリルの仲間には、エメラルドがあります。深い緑のエメラルドと澄んだ水色のアクアマリンは、まったく別の宝石に見えますが、鉱物としては同じものです。違いを生んでいるのは、結晶のなかに入り込んだわずかな元素です。エメラルドはクロムやバナジウム、アクアマリンは鉄。この差が、あの色の違いになります。
もうひとつ、育ち方にも違いがあります。エメラルドは過酷な環境で結晶が育つため内包物が多く、傷のないものはきわめて稀です。対してアクアマリンは、ペグマタイトと呼ばれる空洞のできやすい岩体のなかで、ゆっくり大きく育ちます。そのため透明度の高い部分を選んでカットでき、大きな石も手に入りやすい。同じ鉱物でありながら、価格帯がまったく違うのはこのためです。
名前はラテン語に由来します。水を意味するaquaと、海を意味するmarinus。海水の色そのものを名前にした石です。
モース硬度は7.5から8。水晶より硬く、日常的に身につけるジュエリーとして扱いやすい部類に入ります。ただし、後述するように衝撃には注意が必要です。
3月の誕生石としてのアクアマリン
古代の船乗りたちは、この石が波を鎮め、航海の安全を守ると信じていました。海の名を持つ石が海の守り石とされたのは、自然な連想だったのでしょう。
幸せな結婚をもたらす石とも考えられてきました。欧米では19年目の結婚記念石とされ、日本では4年目とされることもあります。結婚式で青いものを身につけるサムシングブルーの習慣と結びつけて選ばれることも多い石です。
石言葉としては、沈着、聡明、勇敢などが挙げられます。落ち着きや知性と結びつけられることが多く、進学や就職の節目に贈られることもあります。
もうひとつ、夜の女王という別名があります。わずかな光のもとでも輝きを失わないことから、中世ヨーロッパの夜会で好まれたことに由来する呼び名です。照明を落とした室内で色が沈みにくいというのは、実際に石を見比べるとわかる特徴です。
なお、日本の3月の誕生石はアクアマリンだけではありません。珊瑚も同じ3月に定められています。海に由来する石が二つ並んでいるわけですが、珊瑚は生きものが作り出したもので、鉱物ではありません。詳しくは珊瑚とは|3月の誕生石、日本が世界に誇る海の宝石をご覧ください。
当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは石の効果についての考え方をご覧ください。
アクアマリンの産地と特徴
産地として名高いのはブラジルです。特にミナスジェライス州から、大粒で傷の少ない石が長く産出してきました。色は淡めのものが多く、原石の形を活かしたカットが施されることが多いのも特徴です。
濃い青のアクアマリンを指して、サンタマリアという呼び名を聞いたことがあるかもしれません。これはミナスジェライス州のサンタマリア鉱山に由来する名前です。ただしこの鉱山はすでに閉山しています。現在サンタマリアカラーと呼ばれているものの多くは、1991年から採掘が始まったモザンビーク産で、サンタマリア・アフリカーナと呼び分けられています。
ここは注意していただきたい点です。サンタマリアは、いまや産地の名前ではなく色の呼び名として使われています。 商品名にこの語があっても、サンタマリア鉱山産という意味ではありません。濃い青であることを示す表現だと理解してください。
このほか、ナイジェリア、マダガスカル、パキスタンなどからも産出します。日本でも福島県や茨城県のペグマタイトから淡い結晶が見つかりますが、宝石として流通する量ではありません。
アクアマリンは六角柱の形に育つ鉱物です。原石を見る機会があれば、柱の断面が六角形になっていること、表面に縦の条線が走っていることを確かめてみてください。カットされた石からは想像しにくい、結晶としての姿がそこにあります。
大きく育つ鉱物であることを示す例として、スミソニアン協会が所蔵するドン・ペドロがあります。高さ36センチのオベリスク型に加工されたこの石は10,363カラット、およそ2キロ。カットされたアクアマリンとしては世界最大とされています。1936年にはブラジル政府が、1,298カラットのアクアマリンをアメリカのルーズベルト大統領夫人に贈っています。こうした大きさの石が成立するのは、内包物の少ない部分を大きく取れるこの鉱物ならではです。
アクアマリンの選び方・見分け方
まず知っておいていただきたいのが、加熱処理のことです。
アクアマリンの大部分は、緑色を取り除いてより純粋な青にするために加熱されています。ルビーやサファイアのような高温処理とは違い、400度程度の低温で行われるため、石の耐久性への影響は小さいとされます。色は元に戻りません。
そして重要なのは、現在の技術では加熱したものと未加熱のものを見分けることができないとされている点です。つまり「非加熱」と書かれていても、それを証明する手立てが実質的にありません。
これは欠点ではありません。地中で十分に熱を受ける前に掘り出された石を、人の手で仕上げているという理解のしかたもあります。業界でも広く容認されている処理です。ただ、加熱されているのが当たり前だという前提を知らないまま「天然のままの青」と思い込んで買うと、後で知ったときに裏切られた気持ちになる。だから最初にお伝えしています。処理石についての基本は天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識にまとめました。
色の選び方は、濃さと澄み方の兼ね合いです。一般に濃い青ほど評価は高くなりますが、濃さを求めて灰色がかってしまうと、かえって美しさは落ちます。淡くても澄んで明るいものには、独特の清潔感があります。値段だけで上下を決めず、実際に見比べて選んでください。
極端に濃い青には注意が必要です。マシーシェベリルと呼ばれる、放射線照射によって濃い青を帯びたベリルがあります。天然にも産しますが、人工的に照射したものも流通しており、こちらは光に当てると色が薄れていきます。相場から離れて濃い青が安く出ている場合は、産地と処理の表示を確認してください。
透明度については、アクアマリンは内包物の少ないものが多く、肉眼で見える傷がないものが標準です。逆に、平行に並んだ細い管状の内包物があるものは、カボションに磨いてキャッツアイに仕上げることがあります。これは欠点ではなく別の楽しみ方です。
扱い方では、硬度が高いわりに衝撃に弱い点を覚えておいてください。ベリルには割れやすい方向があり、角をぶつけると欠けることがあります。急激な温度変化も避けたほうが無難です。洗うときはぬるま湯と柔らかいブラシで十分で、超音波洗浄機は内包物のある石には向きません。
青い石で迷ったときは、トパーズとは|11月の誕生石の意味・色の種類と選び方もあわせてご覧ください。ブルートパーズはアクアマリンより色が濃く出るものが多く、価格帯も異なります。並べて比べると、それぞれの青の性格がはっきりします。
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