サードオニキスとは | 赤と白の縞が語る、石の名前と選び方

サードオニキスは、石の名前がいかに混乱しているかを教えてくれる石です。「オニキス」は本来、黒と白の縞模様を持つ瑪瑙を指す言葉でした。ところがいま黒いビーズとして売られているオニキスに、縞はありません。しかもその多くは染められています。この石の来歴と、呼び名の整理から始めます。

鉱物名瑪瑙(アゲート/Agate)
和名赤縞瑪瑙(あかしまめのう)、紅縞瑪瑙(べにしまめのう)
分類石英の微細な結晶の集合体(潜晶質石英)
モース硬度6.5〜7
主な産地インド、ブラジル、ウルグアイ、中国、スリランカ
色赤褐色と白の縞
発色元素鉄(酸化鉄)
誕生石8月
名前の由来赤褐色を意味するsardと、爪を意味するonyx

サードオニキスとは

サードオニキスは、赤褐色の層と乳白色の層が交互に重なった縞模様の石です。赤褐色の層をサード、白い層をオニキスと呼び、その二つが合わさった名前になっています。

同じ石英の仲間ですが、水晶とは|4月の誕生石の意味・石言葉と本物の見分け方で扱う水晶とは姿がまったく違います。目に見えないほど細かい石英の粒が集まってできていて、縞のあるものを瑪瑙(アゲート)、縞のない一色のものを玉髄(カルセドニー)と呼び分けます。サードオニキスは縞があるので瑪瑙の側です。

この呼び分けを押さえておくと、宝石名の混乱が見通せます。 赤くて縞のないものがカーネリアン、赤くて縞のあるものがサードオニキス。同じ成分、同じ発色元素(鉄)で、縞の有無だけが違います。

名前の由来は見た目です。赤と白のコントラストが人の爪に似ていることから、赤褐色を意味するsardと、ギリシャ語で爪を意味するonyxを合わせた名がつきました。和名は赤縞瑪瑙、または紅縞瑪瑙といいます。

なお、日本ジュエリー協会は「サードオニックス」という表記を使っています。サードオニキス、サードニクス、サードニックス。どれも同じ石で、呼び方が違うだけです。店によって表記が揺れるので、覚えておくと混乱しません。

8月の誕生石としてのサードオニキス

8月の誕生石は、ペリドット、スピネル、サードオニキスです。ペリドットについてはペリドットとは|8月の誕生石の意味・産地・選び方と扱いをご覧ください。

この石の歴史は、彫ることと分かちがたく結びついています。

層になっているという性質が、そのまま道具になりました。上の白い層を彫り込んで図柄を浮かび上がらせ、下の赤い層を背景として残す。この技法がカメオです。古代ローマで盛んに作られ、印章としても使われました。彫刻に向く石は数多くありますが、色の違う層をあらかじめ備えている石は多くありません。

旧約聖書では、大祭司が胸に着けた十二の宝石のひとつに数えられているとされます。新約聖書の『ヨハネの黙示録』にも、新しいエルサレムの城壁を飾る石として名が挙がります。ただし聖書に出てくる宝石をいまのどの石と同定するかには諸説があり、確定しているわけではありません。

カメオの技法そのものは、古代ローマから途切れずに受け継がれてきました。19世紀のヨーロッパでは、貝殻を彫ったシェルカメオが広まりましたが、石を彫ったものはストーンカメオと呼ばれ、いまも区別されています。硬い石を彫るには相応の技術が要るため、同じ図柄でも仕上がりの精度が違ってきます。

石言葉としては、夫婦の幸福、和合などが挙げられます。赤と白の層が寄り添う姿から連想されたもので、結婚にまつわる意味で語られることが多い石です。縞の模様が一つとして同じでないことから、個であることを大切にする石として語られることもあります。

当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは石の効果についての考え方をご覧ください。

サードオニキスの産地と、縞ができる仕組み

産地はインド、ブラジル、ウルグアイ、中国、スリランカなど。流通量では中国とブラジルが多く、模様の美しいものはインド産だとされます。

縞ができる仕組みは、生成の過程にあります。溶岩の空洞や岩の割れ目に、シリカを豊富に含んだ水が流れ込む。それが少しずつ内側に向かって固まっていくとき、水に溶けていた成分が時期によって変わると、層ごとに色が変わります。赤褐色の層は鉄を含んだとき、白い層は含まなかったとき。つまり縞模様は、その場所を流れた水の記録です。

同じ模様のものは二つとありません。この一点物であるという性質が、古くから彫刻に使われてきた理由のひとつでもあります。

原石は、丸みを帯びた塊として産出することが多く、割ってみるまで中の縞が分かりません。切る向きによって現れる模様も変わります。同じ石から、縞がまっすぐ平行に出る面と、同心円状に見える面の両方が取れることもある。加工する側にとっては、どこで切るかがそのまま出来を左右する石です。

赤褐色の濃さは、含まれる鉄の量で決まります。淡い茶色から深い赤褐色まで幅があり、産地や層によって表情が変わります。

サードオニキスの選び方・見分け方

まず、呼び名の混乱を整理しておきます。

本来オニキスとは、黒い地に白い縞が入った瑪瑙を指す言葉でした。ところが現在「ブラックオニキス」として売られているものの大半は、縞のない真っ黒なカルセドニーです。しかもそのほとんどが染色されたものです。名前が示していた意味と、市場での使われ方がずれてしまっています。

サードオニキスについても事情は同じです。市場に出ているものには、瑪瑙を赤く染めて縞を強調したものが少なくありません。

ただし、染色を悪いことだと考える必要はありません。

瑪瑙は無数の微細な隙間を持つ石です。この構造のおかげで薬液が内部まで入り、色が定着します。日本にも、代々この技術を担ってきた職人の会社があります。染めたあと摂氏300度前後で加熱して染料を定着させ、時間が経っても色褪せないようにする。手間をかけた仕事です。

天然の色を求めるなら無処理を、鮮やかな縞を求めるなら染色されたものを。どちらを選ぶにしても、自分が何を選んでいるかを知っていることが大切です。 処理石についての基本は天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識にまとめました。

質を見るポイントは三つです。

ひとつめが縞のコントラスト。赤褐色と白がはっきり分かれているものが評価されます。ふたつめが層の幅で、均一に揃っているものはカメオの素材として重宝されます。みっつめが白い層の質感で、真珠のような光沢を持つものは上質とされます。

縞が途切れずに巻いているもの、リング状に連なっているものは、原石としても価値が高くなります。

用途によって見る点は変わります。カメオやビーズとして買うなら、縞が模様として美しく出ているかどうか。原石として置くなら、断面の縞がどう流れているか。同じ石でも、何に使うかで良し悪しの基準が変わることは覚えておいてください。

なお、インド産の無処理のものは数が少なく、鑑別書がついているものは価格が上がります。無処理にこだわるなら、そこまで確認したうえで選んでください。

扱い方について。 硬度6.5から7で、日常的に身につけるには十分です。ただし染色されたものは、汗や化粧品、洗剤で色が抜けることがあります。処理の有無が分からない場合は、身につけたあとに柔らかい布で拭く習慣をつけておくと安心です。

保管は乾燥した場所で、直射日光を避けてください。手入れと保管の基本は天然石の浄化方法|石を傷めないお手入れと保管の基本を参考にしてください。

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