シトリンとは | その黄色は、アメジストだったかもしれない

金運の石として知られるシトリンには、あまり語られない事情があります。市場に出回っているもののほとんどは、アメジストを加熱して黄色く変えたものです。天然のシトリンは、アメリカの鑑定機関GIAが「自然界では稀少な存在」と書くほど数が少ない。この前提を知ったうえで、何を見て選ぶかを整理します。

鉱物名石英(クォーツ/Quartz)
和名黄水晶(きすいしょう)
化学組成SiO2
結晶系六方晶系(三方晶系)
モース硬度7
主な産地ブラジル、ボリビア、マダガスカル、スペイン、ロシア
色淡黄、黄金色、帯褐橙色
誕生石11月
名前の由来柑橘類のシトロン、またはラテン語で柑橘を意味するcitrus

シトリンとは

シトリンは、水晶のうち黄色から橙色を帯びたものを指す呼び名です。鉱物としては石英で、水晶とは|4月の誕生石の意味・石言葉と本物の見分け方で扱う無色の水晶と同じものです。

色を作っているのは、ごくわずかに含まれる鉄です。同じ鉄を含みながら、紫になればアメジスト、黄色になればシトリン。この二つは化学組成がまったく同じで、鉄の酸化の状態が違うだけです。あとで触れる加熱の話は、この性質から来ています。

名前の由来は柑橘です。フランス語やラテン語で柑橘類を指す語から来ていて、レモンのような色を指した名前だとされます。

日本でも、かつては産出していました。 山梨県や奈良県の鉱山から黄水晶が採れた記録があります。現在これらの鉱山は閉山しており、市場に出るものはほぼ海外産です。日本の水晶産出の歴史については、水晶の記事で詳しく扱っています。

モース硬度は7。ブレスレットとして毎日身につけても扱いやすい硬さです。

11月の誕生石としてのシトリン

11月の誕生石は、トパーズとシトリンの二つです。詳しくはトパーズとは|11月の誕生石の意味・色の種類と選び方をご覧ください。

この二つが同じ月に並んでいるのには、理由があります。

19世紀のヴィクトリア朝時代、トパーズは非常に高価でした。そこで、色の似たシトリンが代わりに使われるようになります。当時のブローチやペンダントには、トパーズの名で作られながら実際にはシトリンだったものが数多くあるとされます。

その名残で、いまでも「シトリントパーズ」という名前で売られることがあります。これはトパーズではなく、シトリンです。 トパーズは別の鉱物で、硬度も産状も違います。商品名にこの語がある場合は、どちらの石なのかを確認してください。

古代ギリシャ・ローマの時代から、装飾品として使われてきました。悪しきものを祓う護符として、また旅の安全を願うお守りとして身につけられたと伝えられています。中世のヨーロッパでは、太陽の力を宿す石と考えられました。

石言葉としては、繁栄、富、成功、希望などが挙げられます。商人の石を意味する「マーチャントストーン」という呼び名もあり、日本では金運の石として広く知られています。

ただ、この意味づけがどこまで遡れるかは、はっきりしません。黄金を思わせる色からの連想が働いていることは確かでしょう。加えて、トパーズの代用として広く流通したヴィクトリア朝の商業的な背景も、商売にまつわる意味と無関係ではないはずです。日本で金運の石として定着したのは、比較的近年のことです。

当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは石の効果についての考え方をご覧ください。

シトリンの産地と特徴

主な産地はブラジルです。マダガスカル、スペイン、ロシアなどからも産出します。

ボリビアには、この石にまつわる特別な産地があります。アメジストとシトリンが一つの結晶のなかで隣り合って産出する、アメトリンと呼ばれる石です。紫と黄色が斜めに接した独特の姿をしています。同じ石英が、結晶のなかの場所によって違う色になった例で、シトリンとアメジストの関係をそのまま目に見える形にしたような石です。

アメトリンが商業的に採掘されている場所は、このボリビアの鉱山がほぼ唯一だとされます。産地が限られているぶん、市場で見かける機会も多くはありません。

色の幅も広く、ごく淡いレモン色から、琥珀色、赤みを帯びた橙色まであります。濃い橙色のものは「マデイラシトリン」と呼ばれることがあります。ポルトガルのマデイラワインの色にたとえた呼び名で、産地を示すものではありません。商品名として見かけたときは、色の表現だと理解してください。

大きな結晶が採れる鉱物なので、原石でもビーズでも十分な大きさのものが手に入ります。色が淡い石なので、ある程度の大きさがあったほうが黄色が見えてきます。ブレスレットなら粒が小さすぎると、無色の水晶との差が出にくくなります。

シトリンの選び方・見分け方

まず、加熱のことをお伝えします。

市場に出回っているシトリンのほとんどは、アメジストを加熱処理したものです。GIAもこの点を明記しています。アメジストを摂氏450度前後まで熱すると、鉄の状態が変わって黄色に変化する。この方法で作られたものが、いま流通しているシトリンの大部分です。

天然のシトリンも存在します。地中でマグマの熱をゆっくり受けて黄色くなったものです。ただし産出量が少なく、稀少とされています。

この加熱を悪いことと考える必要はありません。 地中で自然に熱を受けたものと、人が炉で熱したもので、起きている変化そのものは同じです。処理の有無で価格が大きく変わることもありません。加熱によって色が安定するため、扱いやすくなる面もあります。

ただ、「天然のままの黄色」だと思って買うと、後で知ったときに気持ちが違ってきます。金運の石として選ぶ方が多い石だからこそ、成り立ちは正確に知っておいたほうがいい。だから先にお伝えしています。処理石についての基本は天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識にまとめました。

なお、非加熱であることを求める場合は、産地と処理を明記している店を探すことになります。ただしシトリンの場合、加熱と非加熱の判別は必ずしも容易ではありません。非加熱と明記された品は価格も上がる傾向があるので、何を優先するかを決めてから探すことをお勧めします。

色で、ある程度は見当がつきます。

加熱でアメジストから作られたものは、濃いめで赤みやオレンジみを帯びた黄色になる傾向があります。対して天然のものは、すっきりと明るいレモン色に近いものが多い。濃く鮮やかな黄色ほど天然だと思われがちですが、実際は逆のことが多いわけです。

もとになるアメジストがどういう石なのかは、アメジストとは|2月の誕生石の意味・産地・選び方と注意点をご覧ください。同じ石の色違いだと知って見比べると、両方の見え方が変わってきます。

結晶の形が残っているものなら、色の付き方も手がかりになります。加熱で色を変えたものは、結晶全体が比較的均一に染まる傾向があります。天然のものには、部分的に色が濃い箇所があったり、色の帯が見えたりすることがあります。ただしこれは絶対的な基準ではないので、あくまで目安として見てください。

なお、スモーキークォーツやレモンクォーツをシトリンとして売る例もあります。スモーキークォーツの発色はアルミニウムと放射線によるもので、鉄によるシトリンとは別の仕組みです。判断に迷うときは、鉱物名と産地を明記している店を選ぶのが確実です。

扱い方で気をつける点が二つあります。

ひとつは日光です。長時間の直射日光や熱にさらすと、色が褪せたり変わったりすることがあります。窓辺に置きっぱなしにするのは避けてください。

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