濃い群青の地に、金色の粒が星のように散る。ラピスラズリは、人類が7,000年以上にわたって求め続けてきた青の石です。和名を瑠璃(るり)といい、日本では12月の誕生石に定められています。この記事では、ラピスラズリという石の正体、日本独自の誕生石指定の経緯、世界各地の文化、そして選び方までを解説します。
| 名称 | ラピスラズリ/瑠璃(るり) |
| 英名 | Lapis Lazuli |
| 主な産地 | アフガニスタン、チリ、ロシア ほか |
| モース硬度 | 5〜5.5 |
| 誕生石 | 12月(日本) |
| 石言葉 | 真実・知恵・幸運(伝承による) |
ラピスラズリとはどんな石か
まず押さえておきたいのは、ラピスラズリは単一の鉱物ではないということです。エメラルドやアメジストが特定の鉱物を指すのに対し、ラピスラズリは複数の鉱物が集まってできた岩石を指します。宝石として扱われる石のなかでは珍しい成り立ちです。
青色を担っているのは、方ソーダ石グループに属する鉱物です。国立科学博物館の説明によれば、著名なアフガニスタン産のラピスラズリも主に藍方石(らんほうせき)から構成されています。従来は青金石が主成分と説明されることが多かった石ですが、分析が進むにつれて理解が更新されてきました。
ここでひとつ、混同されやすい点があります。日本語で「ラズライト」と表記される鉱物には、青金石(lazurite)と天藍石(lazulite)というまったく別の2種類が存在します。カタカナが同じでも中身が違うため、資料を読むときは注意が必要です。
青以外の部分にも役割があります。金色に光る粒は黄鉄鉱(パイライト)。白い筋や斑点は方解石(カルサイト)です。この3つの混ざり具合が、そのまま石の表情を決めます。黄鉄鉱が細かく散れば夜空のように、方解石が多ければ青が薄く見える。同じ産地でも一つとして同じ表情にならないのは、岩石であるがゆえです。
名前の由来も、この石の性格をよく表しています。ラピスはラテン語で石、ラズリはペルシャ語系の言葉に由来し、青や天空を意味します。つまり「天の石」。古代の人々がこの青に何を見ていたかが、名前に残っています。
なおモース硬度は5〜5.5と、天然石のなかでは柔らかい部類です。強い衝撃や落下、酸性の洗剤、超音波洗浄は避けてください。日常の扱いについては天然石の浄化方法|石を傷めないお手入れと保管の基本をご覧ください。
12月の誕生石としてのラピスラズリ
ラピスラズリは12月の誕生石です。ただし、これは日本独自の選択だという点があまり知られていません。
日本の誕生石は、1958年に全国宝石卸商協同組合が制定しました。アメリカの一覧を土台にしながら、日本独自の判断を加えたものです。このとき12月に定められたのが、ターコイズ(トルコ石)とラピスラズリの2石でした。その後2021年、63年ぶりの改訂でタンザナイトとジルコンが加わり、現在の12月は4石になっています。
一方、アメリカのGIAが示す12月の誕生石は、ターコイズ・タンザナイト・ジルコンの3石。ラピスラズリは含まれていません。
同じ構図が5月にもあります。1958年に日本が独自に加えたのが翡翠でした。詳しくは翡翠(ジェイド)とは|5月の誕生石の意味・種類・選び方で解説していますが、日本は誕生石を決めるとき、東洋で長く尊ばれてきた石を選び直していることがわかります。ラピスラズリもまた、日本では古くから瑠璃と呼ばれ、仏教の七宝に数えられてきた石でした。
石言葉として語られるのは、真実、知恵、幸運、成功、洞察力など。興味深いのは、この石が「幸運を呼ぶ石」というより「試練を乗り越えて本当の幸運へ導く石」として語られてきたことです。楽に願いを叶える石ではなく、必要な困難を通り抜けさせる石。青という色の厳しさが、そう語らせてきたのかもしれません。
当メディアでは、こうした意味や効果を、科学的な効能ではなく人々が石に託してきた祈りの歴史としてお伝えしています。詳しくは「石の効果についての考え方」をご覧ください。
世界のラピスラズリ文化|三つの時代が求めた青
ラピスラズリほど、産地が限られながら遠くまで運ばれた石はありません。長らく宝石質の原石はアフガニスタンのバダフシャーン地方でしか採れないとされ、そこから世界へ広がっていきました。
古代エジプトでは、神と交信する石として扱われました。ツタンカーメン王の黄金のマスクにもラピスラズリが用いられています。ファラオや神官が身につけ、護符としても使われました。メソポタミアでは約5,000年前から王族や神殿で珍重され、神々へ捧げる宝石とされています。
中世から近世のヨーロッパでは、この石は絵具になりました。粉末にして作る天然顔料「ウルトラマリン」です。原料の希少さから金より高価だった時代があり、画家たちは聖母マリアの衣という最も重要な部分にこの青を使いました。フェルメールの作品に見られる深い青も、この顔料によるものです。青が高価だった時代、何を青く塗るかは信仰の表明でもありました。
そして日本。ラピスラズリは瑠璃と呼ばれ、仏教では七宝のひとつに数えられます。薬師如来は瑠璃光如来とも呼ばれ、その浄土は瑠璃光浄土と呼ばれました。正倉院には瑠璃を用いた宝物が伝えられ、高松塚古墳の壁画では岩絵具として使われたことが知られています。日本語の伝統色「瑠璃色」も、この石の青から名付けられたものです。
選び方・見分け方
産地による違いから確認しましょう。
- アフガニスタン(バダフシャーン)
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最高品質とされる産地。濃い群青色で白い方解石が少なく、黄鉄鉱が美しく散るものが上質とされます
- チリ
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現在もっとも流通量が多い産地。明るめの青で、白い方解石を含むものが比較的多く見られます
- ロシア(シベリア)
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濃い青ですが流通量は少なめです
- その他
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パキスタン、タジキスタン、ミャンマー、カナダ、アメリカなど
次に確認したいのが処理の有無です。 市場には、着色(染色)で青を濃くしたもの、樹脂やワックスを含浸させたもの、粉末を固めた再構成石、まったく別の材質の模造石も流通しています。
方解石が多い石を染めて濃く見せる処理は珍しくありません。処理の事実を開示している売り手から、説明に納得して購入することが大原則です。染色や含浸の見分け方については天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識に基礎知識をまとめています。
品質の評価は、一般に「濃く均一な群青色」「適度な黄鉄鉱」「白い方解石が少ない」ものほど高いとされます。近年は良質な原石の確保が難しくなっているとも言われます。
ただし、色の好みは評価基準と別物です。 方解石の白が霞のように流れる石には、均一な群青にはない景色があります。黄鉄鉱が多い石は夜空のように見えます。手に取ったときの質感、光の下で見せる表情。信頼できる売り手のもとで、自分の一石とゆっくり出会ってください。
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