クリソプレーズとは | 翡翠ではない緑の石、色褪せの真偽と選び方

青りんごのような緑をしたクリソプレーズは、翡翠と間違われることが多い石です。「オーストラリアンジェイド」という名前で売られていることもありますが、翡翠ではありません。そして加熱も照射もされていない代わりに、別の注意点があります。日光で色が褪せることがあるのです。名前の由来から扱い方まで整理します。

鉱物名玉髄(カルセドニー/Chalcedony)
和名緑玉髄(りょくぎょくずい)
分類石英の微細な結晶の集合体(潜晶質石英)
モース硬度6.5〜7
主な産地オーストラリア、ポーランド、ロシア、アメリカ、ブラジル、タンザニア
色黄緑、アップルグリーン、深緑
発色元素ニッケル
名前の由来ギリシャ語のchrysos(金)とprason(西洋ねぎ)

クリソプレーズとは

クリソプレーズは、カルセドニー(玉髄)のうち緑色を帯びたものを指す呼び名です。カルセドニーは、肉眼では結晶が見えないほど細かい石英の集合体で、赤いものをカーネリアン、黒いものをオニキスと呼び分けます。クリソプレーズはその緑色版にあたり、カルセドニーのなかで最も価値が高いとされる石です。

同じ石英の仲間ですが、水晶とは|4月の誕生石の意味・石言葉と本物の見分け方で扱う水晶とは見え方がまったく違います。水晶が六角柱の透明な結晶に育つのに対し、カルセドニーは目に見えない細かい粒が集まった、しっとりとした半透明の塊になります。同じ成分でも、育ち方が違えばこれほど姿が変わります。

緑を作っているのはニッケルです。エメラルドの緑はクロム、ペリドットの緑は鉄。緑の宝石はいくつもありますが、ニッケルで緑になる宝石はほかにあまりありません。含まれるニッケルの量が多いほど濃い緑になり、淡い黄緑のものと深緑のものでは、含有量に十倍以上の差があります。

名前はギリシャ語に由来します。chrysos(金)とprason(西洋ねぎ)を合わせた語で、直訳すれば「金色のねぎ」。リーキの葉のような黄緑色を指した名前です。マスカットや青りんごにたとえられる色を、古代の人はねぎで表現しました。

クリソプレーズの意味と伝わってきたこと

古代ギリシャ・ローマの時代から、印章やカメオの素材として使われてきました。装身具や彫刻の遺物が残っています。

アレクサンドロス大王が戦のお守りとしてこの石をベルトに付けていた、という話が伝わっています。ただしこれは後世に広まった逸話で、同時代の記録に裏づけがあるわけではありません。

より確かなのは18世紀のヨーロッパでの流行です。ポーランドのシロンスク地方で鉱床が見つかると、この石は一気に人気の宝石になりました。プロイセンのフリードリヒ大王が愛好し、ポツダムの宮殿の装飾に使ったと伝えられています。19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーの装身具にも、好んで用いられました。

日本では、宮沢賢治がこの石の名前を詩に書きつけています。 詩集『春と修羅』所収の「小岩井農場」に、「緑玉髄(クリソプレース)」という語が現れます。賢治は熱心な鉱物収集家で、晩年には砕石工場の技師も務めた人です。風景の緑を石の名で言い表すという発想は、鉱物を見慣れた目から出てきたものでしょう。

石言葉としては、希望、豊穣、癒しなどが挙げられます。新しいことを始めるときの石として語られることが多く、緑という色の連想も働いているようです。

なお、この石は『ヨハネの黙示録』に記された新しいエルサレムの土台石のひとつとして、名前が挙がっているとされます。聖書に登場する宝石の同定には諸説あり、当時どの石を指していたかを確定するのは難しいのですが、古くから名の知られた石であることは確かです。

当メディアでは、こうした意味を科学的な効能ではなく伝承としてお伝えしています。詳しくは石の効果についての考え方をご覧ください。

クリソプレーズの産地と色の来歴

この石は、ニッケルを含んだ蛇紋岩や超塩基性岩が風化した場所にできます。岩が長い時間をかけて崩れていく過程で、地下水に溶けたケイ酸がニッケルを取り込みながら、割れ目や空洞を埋めて固まる。もとの岩に含まれていたニッケルが、そのまま石の色になっているわけです。

産地として名高いのは、オーストラリアのクイーンズランド州マールボロです。この地域はニッケルの含有量が多く、上質なものが採れることで知られています。西オーストラリア州でも産出します。

歴史的に重要なのが、先に触れたポーランドのシロンスク地方です。18世紀にこの石をヨーロッパに広めた産地でした。ほかにロシア、アメリカのアリゾナ州・カリフォルニア州、ブラジル、タンザニアなどからも産出します。

原石の状態では、白や茶色の部分、内包物が多く見られます。茶色は針鉄鉱などの酸化鉄によるものです。色が均一に出ていて透明感のあるものは、そう多くありません。市場でよく見るビーズやカボションは、そうした部分を選んで磨いたものです。

選ぶときの評価も、ここに直結します。色が濃く、色むらが少なく、光を通したときに内側から明るく見えるもの。この三つが揃うほど上質とされます。透明感の高いものはまれで、ごく一部はファセットカットされることもありますが、多くはカボションやビーズに仕上げられます。艶やかで少しとろりとした質感は、細かい粒の集合体であるカルセドニーならではのものです。

クリソプレーズの選び方・見分け方

この石には、加熱や照射といった処理が日常的には行われません。 アクアマリンやモルガナイトのように、色を作るための処理が前提になっている石とは事情が違います。

代わりに、二つの注意点があります。

ひとつめは、染めたカルセドニーが混じることです。 淡い色や無色のカルセドニーをニッケルやクロムの塩で緑に染めたものが、クリソプレーズとして売られることがあります。天然のものはニッケルに由来する吸収スペクトルを示すので、鑑別機関に出せば区別できます。店頭で見分けるなら、割れ目や粒の境目に色が濃く溜まっていないかを確認してください。処理や模造の基本は天然石の本物と偽物の見分け方|処理石・染色・ガラスの基礎知識にまとめています。

ふたつめが、名前の問題です。 翡翠に似ていることとオーストラリアが主産地であることから、「オーストラリアンジェイド」という名前で流通することがあります。これは翡翠ではありません。 翡翠は輝石の仲間、クリソプレーズは石英の仲間で、鉱物としてまったく別のものです。硬度も靭性も違います。翡翠がどういう石なのかは糸魚川翡翠とは|意味・石言葉・日本神話との関わりと選び方をご覧ください。

同じく「レモンクリソプレーズ」という名前で売られる黄色い石も、実際にはマグネサイト(菱苦土鉱)という別の鉱物であることが多いとされます。呼び名が定着してしまっているため訂正が難しい例です。

色褪せについては、見解が分かれています。

日光や熱に長くさらすと色が褪せる、という説明が広く行われています。ニッケルを含む部分が脱水することで起きる現象とされ、褪せた石を暗く湿った場所に置くと色が戻ることがあるとも言われます。

一方で、天然の色であれば褪せないという実務家の証言もあります。1950年代に採れたオーストラリア産の石で作った指輪を、日射しの強い土地で毎日身につけて60年経っても色が変わらない、という具体的な例が報告されています。

産地による違いを指摘する見方もあります。オーストラリア・クイーンズランド産は比較的安定していて、歴史的なシロンスク産は褪せやすいとされる。どれが正しいと断定できる状態ではありません。

実用上は、こう考えておけば足ります。窓辺に置きっぱなしにしない。強い熱を加えない。 日常的に身につけるぶんには、多くの場合問題ありません。修理でジュエリーを加熱するときだけは、職人に石の種類を伝えてください。

洗うときはぬるま湯と石鹸で十分です。強い洗剤や香水は避けてください。保管と手入れの基本は天然石の浄化方法|石を傷めないお手入れと保管の基本を参考にしてください。

目次